「腕一本 巴里の横顔 藤田嗣治エッセイ選」藤田嗣治

作家たちが残した、パリについての「断章」

パリを題材にした小説やエッセー、ノンフィクションなどから、パリについて思いをはせたり、パリでの暮らしだったり、主人公が感じたパリというもの、などなど・・。
図書館や書棚の奥から引っ張り出してきた名著の中から、心に残るフレーズを見つけました。

 

「腕一本 巴里の横顔 藤田嗣治エッセイ選」藤田嗣治
“Bura Ixtupon(With one Arm)” Léonard Foujita

パリはまったく私の想像とまったく反して、今日もまだ石油ランプを使い、多くの家はエレベーターなくして、七階八階に昇降の労を朝夕何度と繰り返えさずばならず夜に入っても石の階段に点燈の設備もなく懐中電燈、蝋燭の火、あるいはマッチの明りで用を達するような旧式な家多く心に描いた浮かれた夢のパリと実際の冷い石造の古びたパリとの差は私を驚かし、且つまた私をして喜ばせ遂に私を捕虜としてしまった。
 
~藤田嗣治「腕一本 巴里の横顔 藤田嗣治エッセイ選」から
◆藤田嗣治/レオナール・フジタ(Léonard Foujita 1886/明治19-1968/昭和43)

東京生まれ。1955年フランス国籍を取得し、同年日本国籍を抹消した。1913年単身フランスに渡りモンパルナスでピカソやモディリアーニらと交友。1923年「五人の裸婦」が「乳白色の肌」と絶賛される。「モンパルナスのキキ」と親交が始まったのもこのころだった。


 オペラ座近くの「伴野商店」が1923年に発行したパリの地下鉄案内図(Photo/BnF Gallica)

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