作家たちが残した、パリについての「断章」
パリを題材にした小説やエッセー、ノンフィクションなどから、パリについて思いをはせたり、パリでの暮らしだったり、主人公が感じたパリというもの、などなど・・。
図書館や書棚の奥から引っ張り出してきた名著の中から、心に残るフレーズを見つけました。
「聖なる酔っぱらいの伝説」ヨーゼフ・ロート
“The Legend of the Holy Drinker” Joseph Roth
一九三四年のある春の宵のこと、かなりの年配の紳士が、セーヌ川にかかる橋の一つの石段を下りていった。川岸には、ほぼ、どの国にもおなじみの光景がひらけるものだ。あらためて思い出していただこう。パリの宿なしが寝ている。より正確には、野営をしている。
~ヨーゼフ・ロート「聖なる酔っぱらいの伝説」から
◆ヨーゼフ・ロート(Joseph Roth, 1894/明治27 – 1939/昭和14)オーストリアの作家。第一次世界大戦に従軍した後、ジャーナリストとして活動しながら、物語性に富んだ作品を数多く発表した。1932年、ナチスが勢力を拡大すると、ユダヤ人だったロートは当時住んでいたドイツを去りパリへと亡命。放浪と酒を愛したロートは死の直前、自伝的な物語「聖なる酔っぱらいの伝説」(1939年)を執筆。滞在していたホテルのカフェで倒れ亡くなった。44歳だった。
セーヌ川、ポンデザール橋のたもと/左岸(2019年)
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